〜物語は、ここから始まる〜
2025年、冬。
札幌、ススキノ。
俺は、高級寿司屋の個室にいた。
目の前には、相良修一(そうら しゅういち) がいる。
60代前半。
やっぱり、すごいオーラだ。
何千人ものアーティストを見てきた男だけが持つ、静かな威厳。
部屋全体を支配するような存在感。
相良さんは、俺の人生を変えた男だ。
そして、もう一人。
小川真理子(おがわ まりこ)。50代後半。
噂には聞いていた。
彼女もまた、この業界で名の知れた人物だ。
個室には、ただならぬ空気が漂っていた。
沈黙が、重くのしかかる。
俺は、あの日のことを思い出していた。
渋谷。
ど真ん中のビルの高層階。
窓の外には、東京の街が広がっていた。
ど真ん中のビルの高層階。
窓の外には、東京の街が広がっていた。
夕暮れ時。
高層ビルのガラスが、夕日を反射して、街全体がオレンジ色に染まっていた。
でも、音は何も聞こえない。
車のクラクションも、人の声も、電車の音も。
すべてが、静まり返っている。
街には、何千人、何万人もの人がいるはずなのに、誰一人見えない。
高層ビルが立ち並び、道路が走り、街が動いているはずなのに、すべてが静止しているかのようだった。
まるで、別世界を見ているかのような感覚。
相良さんは、窓の外を指差した。
そして、静かに言った。
「ソロだったら契約するよ」
その瞬間、俺の心臓が止まった。
ソロ。
俺は、仲間と一緒に夢を追いかけてきた。
でも、相良さんは、俺一人で勝負しろと言った。
窓の外の東京の景色が、急に冷たく見えた。
まるで、俺を拒絶しているかのように。
でも、俺は、答えた。
「やります」
そして、俺は、一人で東京へ行くことを決めた。
あれから、何年経ったんだろう。
俺は、札幌に戻ってきた。
挫折して、再起して、音楽スタジオを始めた。
俺は、札幌に戻ってきた。
挫折して、再起して、音楽スタジオを始めた。
そして今、相良さんと、再び向かい合っている。
個室の空気が、また重くなる。
相良さんが、静かに言った。
俺は、涙を堪えながら、答えた。
「やります。やらせてください」
この物語は、俺がまだ『佐藤勇輝』だった頃から始まる。
(つづく)
ノケ物語・プロローグ「再会」 —— 完