のけ物語
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第5話

少年期編・第5話「ハイパーヨーヨーと浦口先生」

5分で読める ♪ 08:30

浦口先生。僕らのサッカー少年団の監督。いつも長靴を履いている。

少年期編・第5話「ハイパーヨーヨーと浦口先生」

浦口先生の教え

〜僕が調子に乗った話〜

浦口先生。 僕らのサッカー少年団の監督。

いつも長靴を履いている。 風貌は、山下達郎のようなオーラがある。

基本、無口。 何を考えているか分からない。

でも、一言発すると、それが全部正解に聞こえる。

具体的にサッカーを教えてくれたわけじゃない。

でも、背中で何かを物語っている人だった。

浦口先生がいると、空気が変わる。 僕らは自然と緊張感を持ってプレーできた。

そんな先生だった。

B面のおかげで、A面にも慣れてきた頃。

学校で、あるものが流行り始めた。

ハイパーヨーヨー。

知ってる人は知ってると思う。 1990年代後半、小学生を熱狂させたあのヨーヨー。

ロングスリーパー、ブランコ、犬の散歩…… 技を決めると、めちゃくちゃカッコよかった。

で、ここで僕には秘密兵器があった。

実は、日本で流行る前に、ハワイでしか売ってない特別なヨーヨーを持っていたのだ。

蛍光塗料が塗ってあって、暗いところで光る。 後に「ハイパーブレイン」として発売されるやつ。

日本で流行り始めたハイパーヨーヨーとは、比べ物にならなかった。

(親戚がハワイ土産でくれた)

僕はこれを、とにかく自慢したかった。

でも、自慢すると、なんかダメな気がしてやめていた。

ただ、みんなでヨーヨーで遊んでると、自然と僕のヨーヨーに目がいく。 「それ何?」「光るの?」「すげえ!」

もっともっと流行ってほしかった。

そんな中、あの日が来た。

3〜4台の自転車が、こっちに向かってくる。 友達だった。

みんなの自転車のカゴの中には、山積みになった駄菓子が入っていた。

「お前も取っていいよ」

取り放題みたいな感じで、駄菓子を配ってくれた。

本当に嬉しかった。

極端かもしれないけど、夢のようだった。

後で知った。

それは、安倍商店というおばあちゃんが一人でやっている駄菓子屋から、万引きしたものだった。

……。

そして、その流れで、万引きが加速していった。

サッカー少年団の中で、万引きが流行り始めた。

みんながヨーヨーを持ち始めた。

「ヨーヨー、盗める」「バレない」

そんな錯覚と一緒に。

僕の学校は、女子も含めて、万引きがとにかく流行った。

気づいたら、僕もそのうちの一人だった。

僕はヨーヨーを盗んだ後、クラスの持っていない子にそのヨーヨーを配った。

それはそれは、喜ばれた。

変な「足長おじさん方式」。

みんなが喜ぶ顔が、嬉しかった。

調子に乗っていた。 完全に、調子に乗っていた。

そして僕は、ついにボス戦を迎えることになる。

大型デパートへ、ヨーヨーを盗みに行く。

一緒に行ったのは、足の速いリョータくん。

バスで向かいながら、僕らは話していた。

「5個は盗むぞ」 「いや、俺は10個盗む」

……バカだった。 本当にバカだった。

速攻で捕まった。

後ろを振り向くと、5人の大人が横並びになって、僕らを歩いて追いかけてくる。

ドラマのオープニングシーンみたいだった。

走って逃げても、どうせダメだ。 おとなしく捕まろう。

警察も来た。

親が迎えに来るまでの、詰んでる時間

得意の妄想は、悪い妄想に変わった。

とてつもない嫌悪感に包まれた。

小学生にして、警察に捕まったのだ。

親が迎えに来てくれた。 ヨーヨー代を払って、今まで盗んできたところに返しに行った。 返せないところには、お詫びとお金を払った。

帰りの車。 お父さんが言った。

「やるなら見つかるなよ」

冗談めいた言い方だった。 でも、その一言が、僕にはものすごくカッコよく聞こえた。

絶対に、もうやらない。 そう決めた。

後日聞いた話。 リョータくんは、シンプルにボコボコに殴られて叱られたらしい。

リョータ、ごめん。

卒業まで、なんとなく気まずくなって、

喋ることがなくなってしまった。

こうして、友達をなくす感覚も味わった。

次の日。 浦口先生に呼ばれた。 サッカー少年団、全員集合。

お叱りの時間が始まるのは、誰もが分かっていた。 きっかけを作ったのは、僕とリョータだから。

浦口先生が言った。

「万引きを今までにした奴、立て」

僕は立った。 リョータも立った。

そして、4分の3が立ち上がった。

浦口先生も、動揺を隠せなかった。

噂になかった友達も立ち上がって、僕もびっくりした。

浦口先生は、一番端っこの奴の前に立った。

何か、一言言っている。 みんなの前で言うのではなく、そいつにだけ聞こえるような小声で。

何を言っているんだろう。 耳を澄ましても、聞こえない。

釘付けになっていた。

そして、何かを言い終えた後。

ビンタ。

それを、一人一人にやっていった。

僕の番が来た。

浦口先生が、僕の前に立つ。

……何も言ってくれない。

みんなには何か言っていたのに。 僕には、何も言わない。

そして、ボソッと一言だけ言った。

聞き取れなかった。

ビンタ。

たぶん、他の人より軽かった。

でも、その「何も言われない感じ」と、

「少し軽いビンタ」が、

僕にはとても重たく感じた。

浦口先生は、僕に期待してくれていたんだと思う。

それなのに、僕は裏切った。

言葉にされなかったからこそ、伝わった。

調子に乗るのは、やめよう。

悪いことは、もうやめよう。

そう、心に決めた。

浦口先生、ありがとう。 両親、ありがとう。

そこからは、ひたすらサッカーに向き合う日々が続いた。
少年期編・第5話「ハイパーヨーヨーと浦口先生」 —— 完

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