のけ物語
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第4話

少年期編・第4話「A面とB面」

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僕には、A面とB面がある。A面はサッカー少年団の僕。B面はそれ以外の僕。

少年期編・第4話「A面とB面」

ボールを追いかけた日々

〜僕には、2つの顔があった〜

僕は引っ越しが多い子供だった。

小1、小2。手稲中央小学校。
レイガンを温めていた時代。

小3、小4。発寒東小学校。
三角屋根のログハウスから、発寒の平屋へ。

そして小5。西野第二小学校。
発寒の平屋から、庭の広い一軒家へ。

なんで引っ越したのかは、分からない。
聞いたこともない。
そういうもんだと思っていた。

子供って、そういうもんだ。
気づいたら環境が変わってる。
理由なんて、考えない。

ログハウス → 平屋 → 庭付き一軒家

なんか、ランクが迷走してる気がするけど、気にしない。

この頃、僕はひたすらサッカーボールを追いかけていた。

西野に来て、サッカー少年団に入った。
本格的にサッカーを始めるのだった。

ユニフォームを着て、
チームメイトがいて、
コーチがいて、
試合がある。

ちゃんとした、サッカー。

でも、ここで僕はあることに気づく。

僕には、A面とB面がある。

A面。
サッカー少年団でやるサッカー。

B面。
それ以外でやるサッカー。

この2つが、全然違った。

A面の僕は、ダメだった。

緊張する。
体が固まる。
声が出ない。

パスが来ても、焦る。
ドリブルしようとしても、足がもつれる。
シュートなんて、枠にすら飛ばない。

なんか、楽しくない。

コーチの目がある。
チームメイトの目がある。
親の目がある。

「ちゃんとやらなきゃ」
「失敗したらどうしよう」
「みんな見てる」

頭の中が、そればっかりになる。

サッカーじゃなくて、「見られること」をやってる感じ。

でも、B面は違った。

少年団が終わった後、近所のみんなでやるサッカー。

休日に、お父さんや大人の人と混ざってやるサッカー。

こっちは、最高だった。

なんでか分からない。
でも、体が勝手に動いた。

パスが来たら、自然とトラップできる。
ドリブルで抜ける。
シュートが決まる。

「うまいな!」って言われる。
「ナイス!」って言われる。

褒められると、もっと動ける。

A面の僕と、B面の僕。
まるで別人だった。

自分でも不思議だった。
同じサッカーなのに。
同じボールなのに。
同じ足なのに。

なんで、こんなに違うんだろう。

答えは、ずっと後になって分かることになる。

(でも、この時は分からなかった)

さて、ここでひとつ問題があった。

僕が西野に引っ越してくる時、ある噂が立っていたらしい。

「すごい選手が来るらしいぞ」

……え?

どこから始まった噂なのか、分からない。
でも、西野のサッカー少年団では、そういうことになっていたらしい。

後から聞いた話。
浦口先生という人が、僕の試合を見ていたらしい。
発寒にいた頃の、僕の試合を。

そして、こう言っていたらしい。

「あいつ、いい選手だぞ」

西野のエースは、サイちゃんという子だった。

浦口先生は言った。

「サイちゃんとこいつを組ませたら、すごいことになるぞ」

……いや、待って。

それ、B面の僕だと思う (゚o゚;;

たぶん浦口先生が見たのは、少年団じゃない時の僕だ。
大人に混ざって、のびのびやってた時の僕だ。

でも、そんなこと言えるわけがない。

僕は、過大評価された状態で、西野のサッカー少年団に入ることになった。

プレッシャー、すごかった。

結果的に、レギュラーは取れた。
表面的には、うまくいっていたと思う。

でも、僕の中では、ずっとこう思っていた。

早く、B面でサッカーしたい。

少年団の練習が終わるのを、待っていた。
試合が終わるのを、待っていた。

そしたら、B面の時間が始まるから。

近所のみんなと、ボールを蹴れるから。
お父さんと、パスし合えるから。

そっちの僕が、本当の僕だった。

今思えば、これが僕の「本番に弱い」の始まりだったのかもしれない。

見られると、固まる。

評価されると、動けなくなる。

この癖は、後々まで僕を苦しめることになる。

でも、B面の楽しさを知っていたから、サッカーは続けられた。

あの時間があったから、ボールを蹴ることが嫌いにならなかった。

A面とB面。

僕のサッカーライフは、こうして始まった。
幼少期編・第4話「A面とB面」 —— 完

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