僕は引っ越しが多い子供だった。
小1、小2。手稲中央小学校。
レイガンを温めていた時代。
小3、小4。発寒東小学校。
三角屋根のログハウスから、発寒の平屋へ。
そして小5。西野第二小学校。
発寒の平屋から、庭の広い一軒家へ。
なんで引っ越したのかは、分からない。
聞いたこともない。
そういうもんだと思っていた。
子供って、そういうもんだ。
気づいたら環境が変わってる。
理由なんて、考えない。
なんか、ランクが迷走してる気がするけど、気にしない。
この頃、僕はひたすらサッカーボールを追いかけていた。
西野に来て、サッカー少年団に入った。
本格的にサッカーを始めるのだった。
ユニフォームを着て、
チームメイトがいて、
コーチがいて、
試合がある。
ちゃんとした、サッカー。
でも、ここで僕はあることに気づく。
A面。
サッカー少年団でやるサッカー。
B面。
それ以外でやるサッカー。
この2つが、全然違った。
A面の僕は、ダメだった。
緊張する。
体が固まる。
声が出ない。
パスが来ても、焦る。
ドリブルしようとしても、足がもつれる。
シュートなんて、枠にすら飛ばない。
コーチの目がある。
チームメイトの目がある。
親の目がある。
「ちゃんとやらなきゃ」
「失敗したらどうしよう」
「みんな見てる」
頭の中が、そればっかりになる。
サッカーじゃなくて、「見られること」をやってる感じ。
でも、B面は違った。
休日に、お父さんや大人の人と混ざってやるサッカー。
こっちは、最高だった。
なんでか分からない。
でも、体が勝手に動いた。
パスが来たら、自然とトラップできる。
ドリブルで抜ける。
シュートが決まる。
「うまいな!」って言われる。
「ナイス!」って言われる。
A面の僕と、B面の僕。
まるで別人だった。
自分でも不思議だった。
同じサッカーなのに。
同じボールなのに。
同じ足なのに。
なんで、こんなに違うんだろう。
(でも、この時は分からなかった)
さて、ここでひとつ問題があった。
僕が西野に引っ越してくる時、ある噂が立っていたらしい。
……え?
どこから始まった噂なのか、分からない。
でも、西野のサッカー少年団では、そういうことになっていたらしい。
後から聞いた話。
浦口先生という人が、僕の試合を見ていたらしい。
発寒にいた頃の、僕の試合を。
そして、こう言っていたらしい。
「あいつ、いい選手だぞ」
浦口先生は言った。
「サイちゃんとこいつを組ませたら、すごいことになるぞ」
……いや、待って。
それ、B面の僕だと思う (゚o゚;;
たぶん浦口先生が見たのは、少年団じゃない時の僕だ。
大人に混ざって、のびのびやってた時の僕だ。
でも、そんなこと言えるわけがない。
僕は、過大評価された状態で、西野のサッカー少年団に入ることになった。
結果的に、レギュラーは取れた。
表面的には、うまくいっていたと思う。
でも、僕の中では、ずっとこう思っていた。
少年団の練習が終わるのを、待っていた。
試合が終わるのを、待っていた。
そしたら、B面の時間が始まるから。
近所のみんなと、ボールを蹴れるから。
お父さんと、パスし合えるから。
そっちの僕が、本当の僕だった。
見られると、固まる。
評価されると、動けなくなる。
この癖は、後々まで僕を苦しめることになる。
でも、B面の楽しさを知っていたから、サッカーは続けられた。
あの時間があったから、ボールを蹴ることが嫌いにならなかった。
僕のサッカーライフは、こうして始まった。