のけ物語
STORY LAB
第2話

幼少期編・第2話「レイガンと夕暮れ」

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僕の妄想力は、日々進化していた。

幼少期編・第2話「レイガンと夕暮れ」

夕暮れの公園にて

〜妄想少年、進化する〜

僕の妄想力は、日々進化していた。
三角屋根の秘密基地で「設定を作る遊び」を覚えた僕は、次のステージに進んでいた。

人形遊び。

といっても、大量の人形があったわけじゃない。
ヒーローの人形が、ひとつ。
たったひとつ。

でも、永遠に遊べた。

なぜなら、設定は無限に作れるから。
今日のこのヒーローは、記憶をなくしている。
明日のこのヒーローは、実は双子の弟。
明後日は、敵に洗脳されてる。

人形はひとつ。

世界観は関ヶ原くらい広がった。

友達に「まだそれで遊んでるの?」と言われたことがある。
うん、遊んでる。
だって関ヶ原の戦い、まだ終わってないから。

……伝わらなかった (^ ^)

僕の家は、山の中のログハウスだった。
周りは坂道しかない。
平らな道?
ない。

そんなある日、スケボーを買ってもらった。

嬉しかった。
めちゃくちゃ嬉しかった。
テレビで見たことある。あのカッコいいやつ。

僕は早速、坂の上に立った。

傾斜、結構ある。
でも関係ない。
だってスケボーってこうやって乗るものでしょ?

乗った。
滑り出した。

速い。

速い速い速い。

……あれ、これ止まり方知らないな (゚o゚;;

完全に詰んだ。

風が顔に当たる。
景色が流れる。
これ、映画だったらカッコいいシーンだと思う。
でも僕の頭の中は、
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
しかなかった。

次の瞬間、僕は判断した。
あそこ、草むら、柔らかそう。
あそこに転がろう。

転がった。

ゴロゴロゴロゴロ。

……。

セーフ (´-`)

奇跡的にケガはなかった。
運動神経が良かったのか、それとも草むらが優しかったのか。
たぶん両方。

スケボーは、その日から置物になった。

教訓:止まり方を覚えてから乗ろう。

(7歳、学ぶ)

当時、幽☆遊☆白書が流行っていた。
主人公の浦飯幽助が使う必殺技、霊丸(レイガン)。
指先から霊気を発射するやつ。

あれが撃ちたかった。

みんなで「レイガン!」って言いながら遊んでた。
でも当然、撃てない。
だって人間だから。

そんなある日、ちょっと年上の近所の子が、僕に近づいてきた。

「……なあ、レイガンの撃ち方、知りたい?」

え、知りたい。
めちゃくちゃ知りたい。

その子は、内緒話みたいな声で言った。

「いいか、まずレイガンのポーズを作れ」

人差し指を立てて、親指を立てる。
銃の形。

「そしたら、もう片方の手でその指を包むんだ」

包んだ。

「それを……30分間、温めろ」

……30分?

「30分温めたら、霊気が溜まる。そしたら撃てる」

マジか。
マジか。

僕は信じた。
完全に信じた。
だって年上の子が言ってるんだもん。

その日から、学校帰りの30分間、僕はずっとレイガンを温めていた。

右手で銃の形を作って、左手で包む。
歩きながら、ずっと。

家までの道のり、約30分。
完璧だった。

そして、家に着いた。

30分、経った。
霊気、溜まったはず。

僕は静かに、左手を外した。

レイガンのポーズ、完成。

狙いを定める。

……。

どこに撃てばいいんだ?

家? 壊れたら怒られる。
木? なんか関係ない木を撃つの、かわいそう。
空? なんか違う。

僕は、レイガンを構えたまま、固まった。

撃ちたい。
でも撃つ場所がない。

5分くらい悩んだ。

結局、撃てなかった (゚o゚;;

30分間、温め続けた霊気は、

行き場を失って消えた。

たぶん。知らないけど。

僕の家は、両親が共働きだった。

夕方5時。
外で遊んでいると、あちこちから声が聞こえてくる。

「はじめちゃーん、ごはんよー」
「ともきー、帰っておいでー」

ひとり、またひとり。
みんな、名前を呼ばれて帰っていく。

お母さんが夕飯を作って待っている家に。
あったかい光が漏れている家に。

僕は、呼ばれない。

だって、家には誰もいないから。

……。

でも、寂しいとは思わなかった。

いや、ちょっとは思ったかな。
うん、ちょっとだけ (´-`)

夕暮れの公園。

オレンジ色の空。

僕、ひとり。

でも、僕にはやることがあった。

妄想。

みんなが帰った後の公園は、僕だけの世界になった。
ブランコは宇宙船になった。
砂場は古代遺跡になった。
滑り台は、敵の要塞になった。

ひとりの時間が、僕の妄想力を育てた。

今思えば、あの夕暮れの時間がなかったら、

僕は「物語を作る人間」にはならなかったかもしれない。

あの寂しさが、全部、力になった。

僕は一人っ子だ。
両親は、僕をとても大事に育ててくれた。

共働きで忙しかったはずなのに、休みの日はいつも一緒にいてくれた。

夕方5時に呼ばれなかったこと、今は全然恨んでない。

だって、あの時間があったから、今の僕がいる。

レイガンは撃てなかったけど。

妄想少年、夕暮れに進化する。

ひとりの時間が、僕の武器になった。
幼少期編・第2話「レイガンと夕暮れ」 —— 完

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